Marina Ogawa

日本の雇用がDXを遅らせ、ジェンダーギャップを産んでいるのではないか説

仕事 家庭

先日、オーストラリアにある、とある大学の研究者にインタビューをしていただいた。

彼女は優等学位に在籍しており、元々日本に興味があって日本語を勉強していたらしい。また「母の影響もあってジェンダー平等に興味をもった」とも教えてくれた。

研究テーマは「日本のシングルマザーについて」。私も日本のシングルマザーになって1年が経ったので、もし研究に貢献できたとしたら、それはとても光栄に思えた。


日本には、2つの「良くない点」がある。

1つ目はジェンダー格差だ。未だに日本のジェンダーギャップ指数はG7の中で最下位であり、今も政治家や管理職に女性は少ない。ただし教育や健康においてはトップクラスなので、「労働がかなり足を引っ張っている」と言えそうだ。

「男女共同参画局 男女共同参画に関する国際的な指数」より引用

2つ目は、DXがやたら遅いことだ。紙文化が浸透しすぎており「日本の国会はサイバー攻撃に強い」などと皮肉られるレベルである。あまりにも行政の手続きが煩雑なので、私も離婚のときは何度も区役所に足を運び、個人情報を何十回も手書きした。挙句の果てには唯一の身分証であったマイナンバーカードを失効し、一時期は身分証を発行するための身分証がない、病院にもかかれない、みたいな状態になった。

もし行政のDXが適切に進んでいたら、こんな苦労はしなくて済んだと思う。職員の皆さんには良くしていただいたが、子を3人かかえ、かつ困窮しているなかでの大量の筆記作業や役所訪問はひたすらに重い。手続きに殺されると思った(誇張ではない)。

ではなぜ、日本では女性は要職に付けず、行政のDXも進まないのだろうか。私は雇用体系によるものなのでは⋯⋯?という仮説を立てた。

たとえばジョブ型雇用であるアメリカの求人は、ポジションが明確に決められている。なので女性が出産・育児でキャリアを一時的に中断しても、過去の職務スキルを履歴書に残すことができる。

一方、日本はどうだろう。メンバーシップ型雇用の選考軸は「人」であり、業務内容や勤務地、労働時間などは明確に決まっていないことが多い。人材配置を柔軟に行う前提での雇用なので「どんなポジションでもパフォーマンスが出る、使い勝手が良い人材」が求められるのは必至だろう。できれば突然の残業や転勤にも対応でき、新天地でも即順応する人材が好ましい。

しかし子育て中の母親は、残業や出張ができず、子どもの熱で突発的に休むこともある。とても使いにくい。そういった点で20代の独身や、育児を妻に任せる男性に劣ってしまう。日本では過去の職務よりも「現時点の使い勝手」が評価に直結するのだ。

また、ジェンダーギャップ指数総合20位とかなり高順位な国であるフィリピンは、ケア労働(家事育児介護など)をガンガン外注する文化がある。家事労働者市場が厚いのだ。しかし日本は家事労働の外注文化がなく、ケア労働の責任はひたすら女性が負ってきた。つまり、日本の女性は自らのキャリアを折ることで、ケア労働を吸収してきたのだ。

また、日本のDXが遅れているのも、雇用体系で説明できる予感がする。

DXとは、突き詰めれば「人間を機械に置き換える営み」とも言える。DXが進むほど人員が余るし、人員を余らせるのがDXである。しかし日本には解雇規制があるので「仕事が浮いた。よし、解雇ね」とは言えない。すると「無下にはできないし、何かしらの仕事を割り振っておこう」という力学が働き、ブルシット・ジョブ(無意味な仕事)が温存・運用される。近年は人材不足が健在化し、DXの追い風になっているが、人員が余るならそもそも、業務効率化なんてしなくていいのだ。


シングルマザーの話に戻ろう。

私は21歳で長子を産み、しばらく専業主婦として生きてきた。夫に帯同した転勤族である。26歳くらいになると、本格的にキャリアがゼロであることに焦り始め、必死に仕事を得ようと喰らいついた。今大きく困窮せずに生活できているのは、フリーランスという”雇用体系の外”を経験できたからだろう。

しかし、転勤がなければもっと早く働けただろうし、もっと仕事の経験値を積めたように思う。また世帯主が元夫だったことで、離婚時の手続きが謎に増えたりもした。これらは女性ならではの大変さだ。

ただしそれは過去の話で、現在「女だから大変」と思うことは少ない(身体的なことや、性被害防止策などは除く)。

あるのは

など、男女で関係がない「育児をしているゆえの大変さ」である。とくにシングル世帯は、ケア労働の代替手段がかなり少ない。

私は普段日本人としか話さないので、インタビューをしてくれた彼女の反応は新鮮だった。オーストラリアは行政DX先進国なので、紙に住所氏名生年月日⋯⋯を書き続ける日本の話は、旧石器時代のように思えたに違いない。

そして、彼女が開示してくれたので、ここぞとばかりに「私もフェミニストです。でも、日本でそれを開示するのは怖いんです」と伝えた。すると「その怖さはオーストラリアでもありますよ」と、教えてくれた。そうなんだ、どこも難しいなぁ。と思ったりした。

またN=1で根拠が薄い、けどなんとなく感じていることを話した。「子ども優先のエレベーターにずっと乗れない」「電車で席を譲ってくれるのはなぜか日本人より韓国人」などだ。これを機に調べたところ、20〜49歳の男女を対象に「自国はこどもを生み育てやすいと思うか」と聞いた調査では、約6割が「そう思わない」と回答したらしい。

「内閣官房 参考資料」より。元資料は「内閣府『令和2年度少子化社会に関する国際意識調査』(2021(令和3)年3月)」

日本人は大変マナーが良い。逆に言えばマナーを破りがちな子どもは、迷惑な存在にも見える。なんだかあまりにも後進的に思え、途中から「日本を好いてこんなマイナー言語を勉強してくれたのに、なんかごめんなさい⋯⋯」みたいな気持ちになった。課題が多い。

けど、なんだかんだ日本はいい国だと思う。先日アップルウォッチを落としたが、ちゃんと警察に届いていた。治安がよく、医療も食も高水準で、蛇口の水もそのまま飲める。電車が時間通りに来る。私は日本が好きだ。

だからこそ、世界に視野を広げなくては、とも思った。他国の良いところはどんどん真似したい。

よい機会を、ありがとうございました。